名作は湯けむりとともに~文豪が愛した全国の温泉地
2026.04.06

ひと昔前の文豪といえば、温泉に長逗留して名作小説を執筆する、といったイメージがありますが、彼らはどんな温泉地でどのような作品を書いたのでしょうか。温泉にまつわる文人たちのエピソードを集めてみました。

四国の松山市を舞台とした『坊ちゃん』で道後温泉との関わりが知られていますが、漱石自身は九州の温泉地がお気に入りだったようです。新婚旅行をはじめ機会があるごとに九州各地へ出かけており、『二百十日』のように阿蘇内牧温泉への旅行自体を題材とした小説も執筆しています。漱石の風呂好きは本物で、自宅に内風呂があるにも関わらず、近隣の銭湯に通い続けていたそうです。ちなみに明治の文豪として漱石と双璧を成す森鴎外は、軍医のトップであるとともに日本を代表する感染症学者でもあったためか、他人と一緒に入る温泉や銭湯は苦手だったようです。

道後温泉本館、通称「坊ちゃんの湯」
新宿区早稲田南町の漱石公園にある胸像

1897(明治30)年、若干29歳ながらすでに文壇の重鎮に上り詰めていた尾崎紅葉は、読売新聞で小説の連載を始めます。これこそが貫一・お宮で有名な『金色夜叉』であり、大人気作となりましたが、元々病弱だった尾崎は長期連載で体調を崩し、塩原や修善寺といった温泉地で療養。以後、持ち直しては『金色夜叉』の続編、続々編を執筆するものの、実は当時死病だった胃ガンに侵されており、ついには35歳で病没。温泉地を舞台とした作品で大きな成功と深い痛苦を味わい、救いを温泉地に求めた晩年でした。

熱海の海岸にある有名な貫一・お宮像
初代「お宮の松」の切り株。現存の松は2代目

20歳の時、旧制第一高等学校(現在の東京大学教養学部の前身)の学生だった川端は、伊豆に出かけ、天城山麓の湯ケ島温泉に2泊。以後、10年間にわたって毎年2~3度は湯ケ島温泉へ向かい、大正13 (1924) 年は年間を通して居続けだったとか。この時現地で執筆したのが、自身の経験をもとに学生と美しい踊り子の淡い慕情を描いた『伊豆の踊り子』でした。また、後年の代表作である『雪国』も新潟県湯沢町の温泉宿が舞台となっており、この作品にも川端の実際の体験が反映されているようです。

浄蓮の滝近くにある「伊豆の踊り子」像
旧天城トンネル。主人公はこの脇にあった茶屋で踊り子と初めて語らう

白樺派を代表する作家・志賀直哉は、大正2(1913)年に山手線にはねられる事故で重傷を負い、その養生のため兵庫県の城崎温泉を訪れます。この時の滞在は3週間ほどで、当時30歳の志賀にとっては生死について見つめ直す時間だった様子。その体験をもとに3年半後に発表されたのが『城の崎にて』であり、志賀自身の思いが色濃く反映された私小説と言えます。なお、志賀は城崎温泉郷がよほど気に入ったようで、その後も生涯で十数回訪問しています。

奥ゆかしい風情漂う城崎町の街並み
城崎温泉一の湯。洞窟風呂が有名

第二次世界戦前から歴史小説を中心に活躍していた山岡荘八は、戦時中は戦争賛美の小説を発表していましたが、敗戦後に公職追放となり、それまでの自身の姿勢を悔い改めました。これからは平和な時代を築いた歴史上の人物を描こうと、取りかかったのが全26巻に及ぶ超大作『徳川家康』。義兄弟の契りを結んだ栃木県塩原温泉郷の温泉旅館の主人のもとで、一室にこもって執筆を開始し、その後17年間を費やして書き上げたといいます。ちなみに『徳川家康』は新聞連載時から大人気で、一時はこのシリーズが版元である講談社の総売上の11%超を記録したそうです。

駿府城本丸跡(静岡市)の家康像
箒川の渓谷沿いに拡がる塩原温泉郷

太宰と言えば無頼な逸話を残した破滅的な文士という印象が強いですが、そんな彼にも家庭を守ろうと誓いを立て、妻とともに彼女の実家のある山梨県甲府市に移り住んだ時代がありました。昭和14(1939)年のことです。結局、同年の秋に東京都三鷹市へ転居したため、甲府での暮らしは8カ月ほどで終わりましたが、その頃よく通った湯村温泉が気に入り、数年後には『正義と微笑』『右大臣実朝』の2作を長逗留して書き上げています。なお、太宰は宿の人たちにも正体を明かさず、部屋にこもって書き物ばかりしている変な客、という目で見られていたようです。

甲府市の湯村温泉郷
三鷹市にある代表作『斜陽』にちなんだ碑

温泉地での執筆エピソードが残っている作家を中心にご紹介しましたが、他にも井伏鱒二や井上靖など、温泉と縁の深いた大作家は数多く存在します。

彼らはお風呂につかって心身ともにリラックスすることで、意外な着想を得たり、緻密な構想を固めることができたのかもしれません。 改めて入浴が与えてくれる恩恵の大きさがわかると言えます。

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